
こんにちは!雪国の訪看ステーション管理者カムです。今回はコラム回!
冬の時期、雪国での訪問看護はトラブルが絶えません。
私たちは多くの時間を車の運転に費やします。だからこそ、事故やトラブルには細心の注意が必要ですが、自然の猛威の前には、時として自分の浅はかさを思い知らされることがあります。
今回は、私が数年前に経験したある冬の朝のトラブルと、その時に現れた「一人のオヤジ」の話を書いてみようと思います。
1. 1メートルの雪壁と、私の慢心
とある年の2月頃。 その日は、とてつもない積雪でした。私のステーションでは自宅から現場へ直行する場合があり、社用車を自宅に持ち帰っています。
緊急訪問の依頼を受け、いつもより早く出発しようと外へ出たとき、目の前には1m近い雪の壁が立ちはだかっていました。
「早く対応に向かわなければ」 その焦りが、私に浅はかな行動を取らせました。ろくに除雪もせず、雪の中へ車を突っ込ませたのです。
案の定、車はスタック。前にも後ろにも進まない。タイヤが虚しく空転する音だけが響きます。

2. 蒸気機関車オヤジの登場
状況は絶望的でした。早朝で人影はなく、JAFを呼んでもこの雪ではいつ来るかわからない。必死でスコップを振るいましたが、状況は改善しません。寒空の下、汗だくになりながら白んできた空を見上げたとき――。
視線の先に、その「オヤジ」は現れました。
隣のアパートの2階廊下から、こちらを見下ろしタバコを吸っているオヤジ。 氷点下に近い気温の中、濃厚な紫煙を吹き出すその姿は、さながら「蒸気機関車」のようでした。
「兄ちゃん、嵌っちゃったんか?」
「たはは……」
こういう時、人間は素直に助けを求めることもできず、ただ苦笑いを浮かべてしまうものなのだと、後になって思いました。

3. スコップではなく、手にしていたのは・・・
「ちょっと待ってな」
と部屋に戻り、颯爽と階段を降りてきたオヤジ。赤いタイヤメーカーのジャンパーを羽織り、口には相変わらずタバコ。
しかし、その手に握られていたのは、スコップでも脱出用ラダーでもなく、
一本の「荒縄」でした。
なぜアパートの室内に荒縄があったのか。そんな疑問を抱く余裕すら、当時の私にはありませんでした。
オヤジはいそいそと、自分の車(車高短で少しイカツイ)と私の社用車をその縄で結びました。
「先生は自分の車でハンドル握って」
社用車を見て医師と勘違いしたのか、オヤジは私を「先生」と呼びました。言われるがままに乗り込み、ハンドルを固く握る。
衝撃に備え、体を強張らせた瞬間。 後方に力強く引かれる感覚と、何かを乗り上げる浮遊感。
「ブチンッ!!」
激しい音が静寂な朝の空気を震わせました。見事、脱出成功。 しかし、無惨にもオヤジの荒縄は、身代わりになるように途中でちぎれていました。
4. 荒縄が教えてくれた「恩送り」
本当ならもっとしっかりとお礼をしたかったのですが、緊急訪問の時間が迫っていました。
礼を言い、いそいそと現場へ向かった私は、その後二度とオヤジに会うことはありませんでした。
アパートの部屋も分からずじまいで、後日訪ねることも叶いませんでした。
あれから数年。 私は今でも、冬が来るたびにあのオヤジのことを思い出します。
今の私の車には、あの時のような荒縄ではありませんが、牽引用のロープや脱出道具が満載です。
いつか、あのオヤジのように「ちょっと待ってな」と言って、颯爽と誰かを助けられるように。タバコは吸いませんが、準備だけは万端にしています。
ささやかな話かもしれません。 でも、あの荒縄の感触は、人に助けられることの有り難みと、「次は自分が誰かを助けたい」という気持ちを、私の中に確かに根付かせてくれました。
みなさんには、誰かに救われた忘れられないエピソードはありますか?
備えあれば、絶望なし。私の「雪国セット」
あの時、オヤジの荒縄がちぎれてしまった瞬間の音を、私は今でも忘れません。 それ以来、私の車には「あの時の教訓」として、いくつかの道具を常備しています。
1. あの時の荒縄よりも強靭な「相棒」
今の私が車に積んでいるのは、荒縄ではなくこれです。あの時のオヤジのように、誰かを颯爽と助けられるように。

「オヤジの荒縄はちぎれてしまいましたが、これは8トンまで耐えられるので安心です」
2. 自力でも脱出可能!雪国訪看車必須アイテム
困ったとき、いつでもオヤジが助けてくれるわけではありません。
一人でもなんとか解決できるよう、このようなアイテムも車に積み込んでおきましょう。
タイヤの下にかませれば、オヤジいらずかもしれません。
3.オヤジのようなワイルドに憧れる方
いないとは思いますが、困っている方をワイルドに助けたい方にはこちらの「荒縄」がおすすめです。
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